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東京地方裁判所 昭和21年(と)54号 判決 1998年1月30日

主文

被告人を免訴する。

理由

本件公訴事実の要旨は、「被告人は、昭和二〇年二月二四日、戦時に際し、国政を変乱する目的で、緒方竹虎国務大臣を殺害しようと企て、東京都麹町区霞ケ関一丁目一番地大政翼賛会本部大会議室において、同人に対し、所携の短刀で斬り付けたが、同人に体をかわされ、側近者に取り押さえられたため、同人を殺害することができなかった。」というもの(戦時刑事特別法七条二項、一項の罪)である。

記録によれば、本件は、昭和二一年四月三〇日、予審終結決定により東京刑事地方裁判所の公判に付されたところ、被告人は、昭和二〇年一二月二八日に保釈釈放されたが、所在不明となり、昭和二一年一〇月七日の第一回公判期日以降いずれの公判期日にも出頭しなかった。そして、昭和五八年一月一四日の第一三回公判期日を最後に、その後は公判の処分等の昭和二三年法律第一三一号による改正前の刑事訴訟法(以下、「旧刑事訴訟法」という。)二八五条に定める時効中断事由のないまま、平成一〇年一月一三日が経過し、同法二八一条一号に定める一五年間の時効期間が経過したことが認められる。

したがって、刑事訴訟法施行法二条、旧刑事訴訟法三六三条四号により、被告人に対し、免訴の言渡しをする。

(検察官荒木俊夫出席)

(裁判長裁判官 出田孝一 裁判官 大圖玲子 裁判官 岩崎邦生)

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